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セカオワsaori本「ふたご」感想レビュー。(内容・あらすじも)(世界の終わり・初小説)

(※ネタバレというほどではありませんが、内容に触れています。全く知らない状態で読みたい方はご遠慮下さい)

 

 

 

世界の終わり(sekai no owari)の紅一点、さおり(saori)が書いた初の小説本です。

 

元々さおりは読書好き。村上春樹を好きな小説家として挙げており、小説を書くこと自体も不思議ではないかと思います。

 

あとがきを見るとなんと2012年から構想されたものということで、かなり当時の心境が反映されています。(むしろ内容としては当時のことがメインで、最近の活動についてはあまりありません。)

 

実際に読んで見たので感想を。

 

ほぼ実体験

 

僕はもともと、世界の終わりがメインパーソナリティを務めている「スクールオブロック」を聞いているくらいのファンでした。

 

なので、どうしてもそこで聞いていた彼らのエピソードトークと照らし合わせてしますのですが。

 

そうすると、この小説に描かれたことがほぼさおりの実体験であることがわかります。

 

ラジオはかなり熱心に聞いていたので、「あ、これラジオで聞いたな」というエピソードがかなりありました。

 

もちろん小説の醍醐味は、「事実の羅列」にあるわけではなく、登場人物の心情にあるわけで。

 

物語は「主人公・夏子が出会った、月島という少年との関係」がメインテーマ。

 

名前こそ別のものを使用していますが、明らかに世界の終わり(sekai no owari)のさおりと、ボーカル担当の深瀬のことです。

 

二人が中学生の頃から話は始まるわけですが、それから後半になると世界の終わり・リーダーのナカジン、ピエロマスクを被ったDJLoveも登場します。(それぞれ別の名前が付けられていますが、雰囲気や実際にあったエピソードもまんま本人たちがラジオで語っていた話と一致します。)

 

私小説

 

扱いとしては私小説になるのかな、と思いました。

 

そして、結構生々しいです。

 

世界の終わりファンにとっては、誰が誰なのかすぐにわかると思います。

 

またそこに描かれた心情は「さおりの深瀬への恋心」「しかし深瀬はその気持ちに気付いていながら、正面からは受け止めずはぐらかす」など強烈。

 

また深瀬がアメリカ留学に失敗すること、精神病院に入院することなどが描れた部分もあり、深瀬の「病んでいる」当時の状態がかなりえげつなく描写されています。

 

ふたご、とは。

 

深瀬がさおりに対して「自分たちは似た者同士、ふたごだ」といったことに由来。

 

さおりはそれを強く否定します。

 

物語では「恋人ではない」関係性ながら精神を崩すほどさおりに深く依存する深瀬(月島)に対し、さおり(夏子)はうんざりし「私たちは互いに違う人間、自立しないといけない」と。

 

ただし、さおりが辛い時期に「別の世界の見方」を教えてくれたのが深瀬であり、さおりもその記憶が忘れられません。家族ぐるみの付き合いもあり、深瀬に押し切られるとなかなか断ることができないのです。

 

そしてバンドメンバーを決める際も「おまえでいいや」という上からの態度で巻き込まれてしまいます。

 

バンド結成から音楽関係者に目をつけられるまで

 

後半はバンド結成から世界の終わりのブレイクきっかけとなった、音楽関係者にスカウトを受けるまで。

 

世界の終わりと言えば「自分たちのスタジオを作りそこでバンド活動を行なった」というかなり異色な経緯があります。そのことも小説では当時の様子が詳細に綴られています。

 

深瀬発案ながら深瀬はほぼお金を出さず、お金の大半を出したのは現リーダーのなかじんであることや、最後の最後になってDjLoveの加入が決まることなど。

 

当時いた別のメンバーの話。

 

さおりは大学に進学しますが、深瀬に巻き込まれ続けやがて精神的に自分を追い詰めてしまうようになります。

 

全体の感想

 

「世界の終わり(sekai no owari)」というバンド、そしてそのメンバーたちの深くて歪な関係にかなり強烈な印象を受けました。

 

大きくは深瀬の「人を惹きつける魅力」と「周りの人を傷つけてしまう危うさ」に起因している気が。

 

少なくともさおりは出会った頃の深瀬に対する「憧れ」以降はただただ「振り回される」「巻き込まれる」という印象。

 

それに対しさおりが「深瀬のことを理解してあげたい」「でもここまでするのって異常じゃないか、私は間違っているのか」などの葛藤をつづけます。

 

ふたごであると言い切る深瀬、ふたごではないと否定するさおり。

 

さおりの巻き込まれ具合にはちょっと同情してしまいました。

 

売れ始めてからも、かなり「解散寸前」までいった衝突が深瀬とさおりにあったことはラジオのトークで明らかにされていました。(これについては小説にはかかれていません)またラジオ中に二人が険悪になることも。(深瀬とさおりがピリつくと、なかじんとLoveは静かになります(笑))

 

「腐れ縁」という言葉が近いのでしょうか。それにしてもかなり過激な関係だと思います。

 

絶妙なバランス

 

それでもバンドとして世界の終わりがあらゆる人々を魅了し大きく売れたバンドであることは間違いありません。

 

その内部ではただの「苦労」では済まされないようなゾッとするような「深い闇→歪な関係性」が存在するわけですが……

 

かなり「危うい関係関係性」その上でバンド・世界の終わりが絶妙なバランスを保っています。

 

単純に読み物としては面白かったんですが、実際にラジオで話されていたことや雰囲気を踏まえて読むとなかなかに生々しい内容でした。