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【書評】無駄なことを続けるために【ひかえめに言って、最高】

「無駄なことを続けるために」という本を読んだ。控えめに言って最高だった。

 

さっそく読んだ書評(感想?)を書き残しておこうと思う。

 


無駄なことを続けるために - ほどほどに暮らせる稼ぎ方 - (ヨシモトブックス)

 

著者は「無駄づくり」の第一人者

 

この本の著者は「無駄づくり」の第一人者である。第一人者というのは要するに、著者が「これこれこういうことが、無駄づくりです」と勝手に決め、勝手に始めたということである。最高である。

 

具体的に「無駄づくり」とは?著者は一切人の役に立たないような装置を作り、それをSNS(主にYoutube)で発表し続けている。

 

20歳からそういうことをはじめ、いつのまにかそれでお金が稼げるようになり、25歳になる現在はそれを職業にしているというから驚きである。驚きを通り越してちょっと引いてもいる。

 

よしもとクリエイティブエージェンシー所属

 

著者は高校卒業後、お笑い芸人になるための養成所に入所した。そして養成所を卒業後は、お笑い芸人として舞台に立つも、人前に立つことの難しさを感じ、その折に所属していた「よしもとクリエイティブエージェンシー」の提案で、「Youtube」での活動を始めるようになる。

 

最初はピタゴラ装置を作ろうとしていたそうだが、それが作れなかったために「無駄な装置を作る」という、著者の「無駄づくり」が始まった。

 

無駄な装置とは?

 

著者が作る無駄な装置とは、例えばこのようなものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんというか、やばい。

 

この本の読みどころ

この本の読みどころは人によって異なると思う。ここでは、僕が個人的に惹かれた部分をいくつかピックアップしてみようと思う。

 

まず僕が取り上げたいのは、「著者のやっていることと考えていることのギャップ」である。

 

著者は「無駄づくり」という独特のテーマを掲げ、それを様々な媒体で発信している。

 

動画だけ見ると「ただ変なことをやっているだけの人」のようにも思えるが、この本を読むとそうではないことがよく分かる。

 

彼女はかなりの戦略家だ。自分がやっていることをどのように広げ、どうすればより「ウケる」ようになるのか。「見られる」ことを強く意識し、改良を続けるさまは、まさにプロの芸人そのもの。

 

そしてもう一つ僕が気になったのは、「先に手を動かす」という彼女の発想だ。

 

手を動かすことで、何が好きかが分かる

 

この本の第一章のタイトルはこのようにつけられている。

 

第1章 まずは「作る」ことから始める

 (本書目次より引用)

 

そうなのだ。著者は何も最初からすべてを見通すような戦略を立てているわけではないのだ。

 

実際に「無駄づくり」というコンセプトを思いついた時もそうだし、その後様々な無駄装置を作り、それをどのように広げていったかについても。

 

著者は成り行きによって無駄装置を作ることになり、それを作ることによって「自分が好きなのはこれ(無駄づくり)だ」ということを再認識する。

 

確かにぼんやりと「そういうようなことが好き」ということはあったかもしれないが、最初からはっきりと自覚されていたことではなかったのだ、と著者は言う。

 

とにかく彼女は「まずは手を動かすこと」の重要性を強調している。いくつか引用してみよう。

 

 始めのころは毎日更新していたのだが、クオリティは今見ると恥ずかしいほど低い。でも、インターネットの世界は完璧でなくていいのだ。

 

 著者は「まずは質よりも量」というタイプで、「量をこなすことで質はおのずとついてくる」という発想を持っている。

 

 これに関して、「著者の中でも反発があった(プライドが許さなかった)」とする部分はさらに面白い。

 

著者自身、「毎日発信すること」に対して「低クオリティーの作品を大量に晒すよりも、時間をかけてクオリティーの高いものを作った方が良いのでは?」と考え、これも実行にうつしたのだ。

 

その結果がこちら。 

 そこで毎日していた投稿を、週に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回と、どんどんスパンをあけていった。しかし、締め切りを延ばしたところでクオリティが上がるわけではなかった。なぜなら、私はマジもんの怠け者だからだ。

ラストのオチがストレートに最高である。僕はこの部分に強く共感した。

 

僕もこのブログを毎日更新していた時期があるから、その際、この葛藤は何度も感じた。つまり、「質を取るか、量を取るか」という葛藤である。

 

しかしこの問いが浮かんでいること自体、結局「逃げ」なのである。毎日更新することが苦しくなってくる。苦しいわりに結果がついてこず、「こんなことをやっていても意味があるのだろうか」と感じるようになる。

 

そういった時に「量よりも質が重要なんじゃない?」という言葉が浮かんでくる。これは悪魔のささやきである。実際に「時間をかけたコンテンツのため」と更新頻度を落とすと、著者も指摘しているように「自分が怠けものであること」に気づかされる。

 

夏休みが終わらないとしたら、夏休みの宿題が提出されることはない。締め切りを設けない課題は、大半の場合、いつまでたっても完成しないのである。

 

 また、下手でも継続してコンテンツを更新することで、別の視点がひらかれる。そして、自分のつくるものに統一感が生まれてくる。それを続けていくと、無意識に感じていたものがどんどん自覚できるようになってくる。

 

「量から質が生まれる」、それは限られた時間の中でなんとか手を動かし続けると、「自分の得意な部分・好きな分野」に頼らざる負えなくなるからだ。その結果、方向性や作品の雰囲気に偏りが生まれてくる。

 

怠け者が、それでも「好き」で生き残るために

 

 僕たちのような怠けものは「まずしっかりと考えてから」とか「よく計画を練って」などと、行動することを先延ばしにしてしまう。

 

 そして作り始めてからも「こんな質の低いものは人に見せられない」とか、「もっと時間をかけてコンテンツを作りこみたい」などと、完成させること、人に見せることをも先延ばししようとする。

 

 この本は、「マジもんの怠け者」と自省する著者が、周りに大人(所属事務所の人々)に見張られたり、締め切りに追われたりしながら、なんとか手を動かし続け、その中で得た気づきを「無駄なことを続けるために著者が考えたこと」としてまとめたものだ。

 

 本書を読むと著者にとって「無駄なものを作り、それを発信するということ」が彼女のアイデンティティーの一部分を成しているものであるということがよく分かる。

 

 彼女が抱える深い鬱屈と、周りに「笑い」として受け入れてもらいたいと感じる強い自己承認欲求。

 

 それらを彼女は「手を動かす」「手を動かすことで気づく」という作業を経て、「食べていける(社会的に価値を認められた)」というところまで自分の可能性を昇華させた。

 

 何か芸術的なこと、あるいはモノを作ることに関わる野心のある人の中には、「食えないアーティスト」という古典的な芸術家像に憧れる人もいるだろう。

 

 しかしこの本の中で彼女が描いた等身大の「食えるアーティスト像」は、かなり魅力的だ。

 

「好きなことで稼ぐ」という希望が様々なところでささやかれている。本書は間違いなくその希望に対する一つの回答だが、それは驚くほど現実的で、等身大で、泥臭くて、そして最高にかっこよかった。